<ご相談内容>
本日産後15日目で、自分の実家に里帰りをして、養生しています。
上の子は幼稚園の関係で自宅で同居している義両親にお世話になっています。
(自分の実家と自宅の距離は車で1時間弱です。)
上の子には入院以前から寂しい想いをさせていたので、自分の養生は端折ってでも早めに自宅に戻るつもりでいました。
ところが、本日、義両親から「(上の子が)手足口病になった。」と連絡がありました。
手足口病は昨年も罹ったのに、また罹ることってあるのでしょうか?
新生児には感染る危険性はあるのでしょうか?
母親である私にも罹る危険性はあるのでしょうか?
<SOLANINの回答>
まず、手足口病とは何なのか?
これは、コクサッキ―ウイルスのA6、A9、A10、A16型か、エンテロウイルス71型に感染すると、起こり得る病気の名前ですね。
多くのウイルスが原因として判明していますから、何回も罹ってしまうことがあります。
また、現時点で予防注射はありません。
潜伏期は3〜7日程度とされています。
感染経路は飛抹・接触・糞口と、幾つもあり、しかも感染力は強いです。
症状としては2〜3日発熱が続くこと、手のひら・足裏・口腔内に水疱みたいな発疹が出ることです。
手のひら・足裏の水疱みたいな発疹は潰れずにそのまま自然に消退しますが、難儀なのは口腔内の水疱みたいな発疹です。
潰れて潰瘍みたいになり、そうすると、飲食するたびに物凄く沁みるので、痛くて堪らなくなり、おなかが空いてもおっぱいやミルクがまともに飲めなくなったりすることも稀ではありません。
哺乳力が低下するため脱水にもなり易く、月齢が小さい赤ちゃんほど危険とも言えます。
感染のリスクは新生児だから無いとは言えません。
また、妊婦さんや産後のお母さんは抵抗力が低下していますから罹る危険性は高いです。
上の子さんには申し訳ないですが、可能であればこういう状況ですから、義両親にも説明され、今暫くは、お世話をお願いすることをお勧めします。
また、上の子さんの主治医にも連絡のうえ状況を説明され、いつ頃から上の子さんと合流してもいいのかをきちんと確認してくださいね。
特に新生児〜生後3ヶ月以内の赤ちゃんは、(手足口病に限らず、原因が不明でも)発熱が続くようであれば、大事をとって通常入院になります。
症状自体は概ね1週間前後で消退しますが、うんちなどからウイルスが検出される(=感染力)は約1ヶ月間はあるとも報告されているので、厄介です。
念入りな含嗽や手洗いやマスクの装着が感染対策として重要です。
私の勤務先の母乳外来に毎月受診される、Qさんという方がおられます。
Qさんの上の子さんの卒乳は4歳くらいだったと記憶していますが、卒乳されてからも大変健康でおられます。
現在は保育園の年長さんです。
集団生活中ですから、もちろん感染る病気に罹られることもありますが、何というか、重症化しないのですね。
暫く前にお会いした際に伺ったことですが、或る日、脚が痛いと訴えがあり、受診したところ蜂窩織炎(ほうかしきえん…注1)と診断されたそうです。
重症化すれば入院加療となりますが、熱発することも無く、切開の必要も無く、抗生物質の投与も最小限で済み、完治されたとか。
この数ヶ月後にもやはり脚が痛いと訴えがあり、「毛嚢炎をこじらせたのか?」「すわ、蜂窩織炎か?」と受診した際は当初、癤(せつ…注2)の疑いとのことでしたが、実はもっと重症な癰(よう…注3)であると診断されたものの、熱発することも無く、抗生物質の投与も最小限で済み、完治されました。
他に何も変わったことや特別な健康法も実践しておられませんので、これもおっぱいパワーかな?と思う次第です。
注1)蜂窩織炎(ほうかしきえん)・・・黄色ブドウ球菌等による感染症で、真皮から皮下脂肪組織感染する。ちなみに表皮に感染した場合は伝染性膿痂疹つまり俗に言う「とびひ」である。患部は発赤・腫脹・疼痛・熱感が急速に拡大し、熱発・頭痛・悪寒・関節痛を伴うこともある。進展性の化膿性炎症である。
注2)癤(せつ)・・・黄色ブドウ球菌が原因菌であることが多い、1本の毛のみが感染して生じる。俗に「おでき」とも呼ばれる。
注3)癰(よう)・・・黄色ブドウ球菌が原因菌であることが多い、数本の毛が束になって感染して生じる。皮膚が発赤し、腫脹し、痛みを伴う。
最初にお断りしておきますが、これはあくまでレアケースだと思われます。
しかしながら、所見に変化があったことは担当の小児外科ドクターが認めておられますから、事実でもあります。
Aちゃんは1歳5か月時に右顎のラインに沿って良性のリンパ腫が出来ました。
経過観察中であるものの段々大きくなるし、担当の小児外科のドクターから、「涼しくなったら手術しましょう。」と言われておられました。
入院手術は心配だけど、こればかりは止むを得ないとお母さんもお父さんも腹を括っておられました。
ところが、手術適応の大きさになってしまったリンパ腫が、どういうわけか徐々に縮小してきたのです。
何も変わったことはしていないのに。
ちなみにAちゃんは4歳前まで長期授乳をしてこられました。
つまり当時は現役バリバリのおっぱい星人だったのですね。
おっぱいの免疫は1歳を過ぎても続くものも多くあり、1歳を過ぎても濃度が高まるものがあると過去記事に書きましたが、その生き証人のような存在がAちゃんなのです。
担当の小児外科のドクターはもうビックリされて、「こういう現象は有り得ないのですが、でも、リンパ腫は消えてしまったので、手術は不要ですね。」と仰ったそうです。
Aちゃんのお母さんは「私はこれっておっぱいの効果だと思うのです。それしか考えられません。」と、ニコニコ顔で仰いました。
もちろんその後も、おっぱいを卒業しても、再発することなく元気に過ごしておられるAちゃんでありました。
「おっぱいを飲んでいると、免疫が付きにくくなるのか?」みたいな都市伝説があるようですね。
先日初めて聞きました。
結論を先に言うと、真逆です。
おっぱいを長く飲んでいればいるほど、おっぱいは単に病気にかかりにくくする免疫を供給しているだけではなく、免疫発達を制御していることが分かってきています。
免疫制御って、なんだか難しそうな単語ですが・・・(汗)
例えば、予防接種。
ポリオ、破傷風、ジフテリアワクチンに対する抗体価を高めます。
母乳栄養の赤ちゃんは母乳を全く飲まなかった赤ちゃんと比較して、BCGワクチンに対する反応が高いという報告もあります。
凄いじゃありませんか!
簡単に言えば免疫の獲得が良好になるってことですね。
なので、安心しておっぱいをあげてくださいね♪
普通に考えて、免疫物質が最も多く含まれるのは初乳なのは、みなさんご承知の通りです。
様々なものがありますが、代表的なものとして白血球。
カラダの中に病原体が侵入してくると、撃退するために増加します。
基準値は検査手技や計測する機械によって、多少の変動がありますが、一般的には4000〜9000個/μlとされています。
それに対し、初乳の場合、100万もあるのです。
ちなみに6か月時点でも10万はあるそうです。
血液中の10倍以上の白血球がおっぱいには含まれます。
減ったとはいえ、感染防御に必要十分な量は含まれているのですね。
多く含まれるが月齢と共に段々減っていく。
それが免疫物質全般に言えることだとついこの間まで私も思っていました。
しかし、違うんですね。
リゾチームという免疫物質は細菌の細胞壁を破壊するという働きを持ちますが、何と1歳以上の方が増えてくるのだそうです。
確かに1歳以降ですと、保育園に通所している子どもの数は0歳よりも増えます。
何かしらの病気も貰って来ます。
でも、クラスに何人かいるおっぱい星人で、ビックリするくらい強い子がいますよね?
クラス全滅か?というくらいの感染る病気が流行していて、なのにピンピンしている子。
きっと、このリゾチームのお蔭ではないかと指摘されているとか。
長くおっぱいをあげることは、免疫学的にも意味があるのですね。
おっぱいをあげることは、消化器系や呼吸器系の感染症、中耳炎等の発症を低下させることは過去記事にも書きましたので、みなさん憶えておられるかと思います。
それだけではなく、尿路感染症の発症をも予防することをご存知でしょうか?
完ミの赤ちゃんは完母の赤ちゃんに比較して、尿路感染症に罹るリスクは5倍も高いそうです。(涙)
尿路感染症の代表疾患でもある腎盂腎炎に罹ったことのある生後2ヶ月半〜6歳の幼児を調査したところ、おっぱいをあげていた期間が有意に短かったと報告されています。
つまり、おっぱいをあげていた期間が長いほど、離乳後も尿路感染症の予防効果は持続することが判っています。
おっぱいの予防効果は出生時が最高で、7か月時までに徐々に減少してくるのですが、おっぱい中のオリゴ糖と分泌型IgA抗体のおかげで、原因となる細菌が上皮細胞に付着しにくいことが防御のメカニズムになっているそうです。
★病院でも毎年何人もの尿路感染症の乳幼児が入院してきますが、振り返ってみますと他院出生の完ミの赤ちゃんが殆どで、完母の赤ちゃんは稀です。
完母の赤ちゃんで尿路感染症で入院となるのは、やはり7カ月以降の予防効果が減弱してきた時期であるとか、出生前及出生後の超音波検査で、水腎症が指摘されていた赤ちゃん等の理由がある場合のようですね。
おっぱいって凄いですね♪
麻疹・風疹・流行性耳下腺炎・水痘などの感染症は、1度罹患すれば普通は抗体ができます。
また、予防接種をすれば、病気の種類にも依りますが、90〜95%の方は抗体が作られます。
自然罹患であろうと、予防接種であろうと、抗体ができたかどうかは血液検査で調べることができます。
例えば風疹は妊娠初期の全妊婦に調べられます。
複数回妊娠すれば、その時その時には抗体があるかどうか、調べられます。
風疹に罹患した方と接触すると、抗体価がババ〜ンと跳ね上がります。
逆に、罹患した方と全く接触されてないと、抗体価は下がります。
(抗体価の数値には変動が付き物です。)
風疹の抗体価は8の倍数で表します。
×8より少ないとマイナスつまり、免疫が無いってこと。
×16・×32・×64・×128・×256・・・などの数値で表します。
抗体価があるかどうかの検査はコスト的にも高いようで、調べるところまではされないお母さんが殆どです。
ちなみに、オトナになってもこれらの予防接種を受けることはできます。
いつ受ければいいのか?についてはホームドクターに相談されては如何でしょうか?
果たしてどうなんでしょう?
完母の新生児って風邪をひいてしまうのでしょうか?
赤ちゃんはお母さんの胎盤から、カンガルーケアをしたならばお母さんの皮膚から、そうしてお母さんのおっぱいからと3層構造で免疫を貰っています。
しかし、風邪のウィルスの種類は200弱あると言われています。
結構たくさんの種類があるんですね。
となると、お母さんが出産までに全ての風邪ウィルスの抗体を持っておられるということは、まずもって無いことがお分かりいただけるのではないでしょうか?
風邪に限らずですが、このようなウィルスは外の世界と繋がっているお父さんや兄姉が家庭内に仕入れて来ることが多いです。
お母さんが免疫を持っていない風邪ウィルスを貰ってしまうと新生児でも風邪をひきます。
もちろん赤ちゃんの抵抗力や栄養状態なども感染する・しないに関与しますし、回復が早い・遅いにも関与します。
いつもに増して、含嗽・手洗いきちんとしましょう。
以前、免疫3部作の記事を書いた時、「胎盤由来の免疫」についても触れましたが、(いわゆるIgG抗体によるもの)憶えておられますか?
お母さんが罹患したり、予防注射を打って抗体を持っておられたら、胎盤を通して赤ちゃんに免疫をあげることができる・・・ということが記事の要旨でした。
で、具体的にいくつかの病気の免疫の有効期限を知ることができたので、お知らせしますね。
《予防注射でいえば生ワクチン系の病気》
麻疹・・・生後3ヶ月まで。ただし、効果は弱いながらも生後4〜6ヶ月までは持続。
風疹・・・生後6ヶ月まで。同様に生後9〜10ヶ月までは持続。
おたふく風邪・・・生後10ヶ月まで。
水痘・・・生後1ヶ月くらいでも感染の危険性大!(←早いうちから、かなり危険です)
《予防注射でいえば不活化ワクチン系の病気》
百日咳・・・胎盤からは移行しません。生後3ヶ月からジフテリア・破傷風との3種混合ワクチンを接種していき、免疫を獲得する必要あり。新生児でも感染する。
破傷風・・・上に同じ。土の中にいる菌なので、月齢の小さい赤ちゃんにはあまり関与しそうにない菌ではあるが、泥んこ遊びを心おきなくさせてあげたい場合は予防注射による免疫獲得は重要です。
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