貰い乳。
昔の日本では、特段変わったことではなく、日常的に行われていたそうです。
私の祖母世代では、産後の肥立ちが悪くておっぱいが出ない若しくは(出産で命を落とした方も稀ではなかったので)お母さんを亡くした赤ちゃんはおっぱいを飲ませてもらえなかったら死活問題なので、善意として、おっぱいが良く出るお母さんがお助け隊としてあげていたそうです。
ヨーロッパ諸国では母乳銀行というものがあり、未熟児ちゃんにおっぱいをという意味合いが主ですが、善意のお母さんから母乳を預かリ、必要な時に提供するということがシステム化されているそうです。
献血のおっぱいバージョンと解釈できそうですね。
さて、被災されて避難所生活をしておられるお母さんであっても、おっぱいをあげている方は、ショックや絶食で一時的におっぱいの出方が今イチになっても、頻回直母をしていけば、分泌は復旧してきます。
今後の生活に不安はいっぱいだとは思いますが、おっぱいの出方については冷静強気でいてくださいね。
懸念されるのは完ミの赤ちゃんです。
粉ミルク、消毒液、消毒容器、鍋、カセットコンロ、清潔な水・・・何にもない所があると聞きます。
TVで石巻(だったと思います。)の病院で、赤ちゃんの粉ミルクを(缶ではなく、その時飲む分だと思います。)分けてくれるとのことで、お母さんは避難所で食べ物を貰うのを諦めてでも(その時点で3日間、何も食べていないと仰っていました。)赤ちゃんに粉ミルクを分けてもらうために病院に留まっているという報道がありました。
もちろん、自分を犠牲にされてでも、赤ちゃんのミルクが調達出来ることを選ぶのはお母さんの赤ちゃんを守りたいという崇高な気持ちでしょう。
それを否定する気は毛頭無いです。
でも、それではお母さんの健康はどうなるのでしょうか?
万一お母さんが栄養失調になり、赤ちゃんのお世話が出来なくなってしまったら大変です。
粉ミルクやそれに付帯する物資を自己調達しようと努力中のお母さんも居られるのでしょうが、お店の棚は空っぽで、援助物資は行き渡らないとなると、これはホントにヤバいです。
ですので、このような非常事態に於いては、もしも、お母さん同士で同意があれば、善意のお母さんからの貰い乳という選択も有りなのではないかと考えます。
もちろん無条件にとは申しません。
最低限提供してくださる方の健康チェックは必要だと思います。
おっぱいの分泌に余裕があり、尚且つ感染症の既往が無いことを証明できるものを持っておられることが必須条件です。
それは何か?
母子健康手帳です。
妊婦検診の初期、あれやこれやの血液検査をされたかと思います。
その記録が母子健康手帳には記載されている筈です。
病産院によって、検査項目が任意のものもあるのでしょうが、きっちりされている病産院であれば、恐らくこのような検査項目が記載されていると思います。
HIV・・・これはエイズウイルスですね。
HTLV・・・ATLAと記載されていることもあるようです。成人T細胞型白血病ウイルスですね。(母乳を通して感染するリスクがある。)
HBV・・・B型肝炎ウイルスですね。
HCV・・・C型肝炎ウイルスですね。
STS/TPHA・・・梅毒ですね。但しSTS(+)でもTPHA(-)であれば、梅毒であるとは限らないです。例えば、ある種の肝臓疾患の際にもそのような結果が出るので、本当に梅毒に感染したことがあればTPHA(+)になりますからね。梅毒の治療を受けて治癒したとしてもTPHAは(+)のまま残存しますが。
これらの検査で何も問題なければ、おっぱいを通して感染症云々ということは考えにくいです。
もしも、完ミのお母さんで赤ちゃんに飲ませられるものが無くて困っている方がお近くに居られたら、母子健康手帳を見せて差し上げて、「このまま赤ちゃんが衰弱したら大変ですから、もしよかったらミルクが手に入るまで1回でもおっぱいを飲ませてあげましょうか?」と申し出てあげては如何でしょうか?
また、(持っていらっしゃったらの話ですが)献血手帳があれば、より一層安心されると思います。
何か感染症があったり、持病があってお薬を服用されている方は基本的に献血は出来ませんからね。(もちろん、妊娠中や授乳中は献血をしてはいけないので、最後に献血された日付けが若干古いかと思いますが・・・)
月齢が大きな赤ちゃんはよそのおばちゃんのおっぱいだと、警戒して飲まないこともありますが、3ヶ月くらいまででしたら、ほぼ確実に貰い乳を飲むと思います。
言い聞かせをすれば、5ヶ月くらいの赤ちゃんでも貰い乳を受け入れる例も聞いたことがあります。(平時でしたが、ママ友から頼まれて自分のおっぱいをママ友の赤ちゃんに飲ませたことがあるというお母さんと先日お話ししました。)
こんなことを言ってはナンですが、他人様から貰い乳をすることに何となくの抵抗感があるのは恐らく完ミ赤ちゃんのお母さんの心の葛藤だと思います。
どうしても他人様からの貰い乳を心理的に受け入れ難いのであれば、「お気持ちは嬉しいのですが、まだ何とかなりそうなので今は大丈夫です。」とお断りするのも有りだとは思います。
でもね、申し出る方も相当の覚悟と勇気が要ることを分かってくださいね。
赤ちゃんの命を繋ぐための貰い乳であれば、善意の他人様のおっぱいを受け入れることも、お母さんとして立派な選択肢であると私は思います。
尚、母子健康手帳の検査項目で他に目につくものがあるとしたら、以下の通りです。Rubella・・・風疹。Measles・・・麻疹。Mumps・・・おたふく風邪。
これらは妊婦さんとして抗体をもっているかどうかのための指標なので、おっぱいを通して感染症云々ということは一切関係ありませんからね。
ご安心くださいね。
追記:あげる方も貰う方も、もしも赤ちゃんが感染る病気(例えば鵞口瘡とか、上気道炎とか)の場合は治るまで遠慮した方がいいかもしれません。
搾乳ならば問題ないと思いますが・・・
通常おっぱいを含ませるのに乳頭・乳輪の清拭は不要ですが、他人様ということで、
何かで拭いてから咥えさせるという方がいいかもしれませんね
(2011年3月17日0時25分)
追記:はなかげさんの記事にジャンプできるよう、手配しました。
↓ ↓ ↓
災害非常時の貰い乳。