VBACについて。
<ご相談内容>
1歳になったばかりの娘が一人います。
帝王切開での出産でした。
そろそろ2人目を…と思っています。
1人目を帝王切開で出産しても2人目以降を経膣で出産される方がいらっしゃいますが(VBACって言うんですか?)以前助産師さんに「見てるこっちの方が(いつ破裂するか)怖くてドキドキする」って言われました。
SOLANINさんはVBACについてどう考えておられますか?
帝王切開の準備をしながらのお産になると思いますが、経膣に出来なくなる確率はどれくらいなのでしょうか?
<SOLANINの回答>
以前、帝王切開されたお母さんの妊娠間隔について記事化しましたが、それについては既読と見做し(つまり参考記事として知識がおありになると解釈して)書かせていただきます。
と言っても、恐らく厚生労働省の統計でも都道府県単位の統計でも、VBACの項目は無かったと思います。
BFHの申請書類の項目ですら、VBACの項目はなかったですし。
なので、統計的なことは私の勤務先のデータになります。
年により多少の変動はありますが、全分娩件数の4%はVBACです。
VBACを試みるも、医学的に困難となり、帝王切開に変更をせざるを得ない確率は過去4年間、全VBACの約2%です。
VBACなんてことがあるのさえ知らない(そういうことができることを想像だにしない)医療者(主に産婦人科領域以外の医療者という意味です。)は、かなり居られるのではないかと推察します。
また、国内の現状では、VBACは絶対しない主義の産婦人科ドクターの方が、割合としては圧倒的に多いのが現状だと思います。
それはやはり、大変申し上げにくいのですが、産婦人科領域は何かあれば直ぐに裁判になる確率が他科とは比較にならないくらい高率であるため、何故帝王切開に至ったのか理由を吟味せず、帝王切開=安全・無難・裁判回避という考え方が、幅を利かしているからなのでしょうね。
例えばですが、低身長の初産婦で、それが主な原因で児頭骨盤不均衡(CPD)で帝王切開となれば、次回の出産時も、条件(=児頭が骨盤を通過出来ない)が変わる可能性は低い(=但、よほど頭が小さな赤ちゃんであれば可能かもしれないので別ですが・・・)ですから、帝王切開が選択されても致仕方ないと考えます。
それから、2回以上反復して帝王切開している方は、最初からVBACは適応外です。
そうではなく、例えば初産婦で逆子であることを理由に帝王切開になったとしたら?
現状では、国内・海外を問わず、施設分娩が普通にある国であれば、初産婦の逆子は問答無用で帝王切開になるのがスタンダードでしょう。
でも、だから次回も無条件で帝王切開・・・ではないよというのがVBACですね。
ダブルセットアップといって、安全のため、予め手術前検査を済ませ、万一経膣分娩が不可能になれば帝王切開に切り替えることは申すまでもありません。
とは言っても、私自身がVBACされる方の分娩介助をしたことはございませんから偉そうなことは申せません。
ですので、勤務先(★病院)で、実際何件もVBAC}を介助した助産師に聞いたところ、やはり「ヒヤヒヤドキドキは通常とは比較にならないくらいある。」と率直に口を揃えて答えてくれました。
ただ、私の勤務先は産婦人科ドクターの方針(自然分娩と母乳育児)があるので、ドクターが妊婦検診中に該当者にはVBACの説明をされています。
そして、VBACの同意書を書いていただいた方にはVBACを試みる・・・という流れになっています。
もちろんというか、VBACの場合、通常の分娩よりもドクターは早くからスタンバイされるというか、殆ど産婦さんに張り付き状態です。
子宮破裂防止のため、最後は吸引分娩になりますから、吸引カップを設置する都合上、会陰切開は避けられないです。(稀に吸引間に合わず、スルリとお生まれになる赤ちゃんも居られますが。)
それから、産婦さんがVBACを望まれても、産婦人科ドクターや助産師の受け入れ態勢が整った施設でないと、VBACを取り扱ってはもらえないのでご注意くださいね。