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2009年12月19日 (土)

成人T細胞型白血病の母子感染について。

(注)最強母乳外来・フェニックスにて「成人T細胞型白血病の母子感染について。(改訂版)」公開中です
最新の内容は上記でご確認ください。

以下、過去記事

産婦人科関係の医療者は知っている感染症として、「成人T細胞型白血病」(以下ATLAと略します。.)という病気があります。
母乳を介して感染する病気と言われています。
HTLVというウィルスが、感染することによるものです。

大抵の場合、妊娠して最初の血液検査(肝炎や梅毒の検査をしますよね?)で一緒に調べます。(多分、フツー頼まなくても調べられます。)

昔は人工栄養にすれば感染を防げるという考え方が主流でしたが、最近は少し変わってきています。
白血病とは恐ろしい病気ですが、そのほかの白血病とは異なる部分があります。
日本国内にはこのウィルスに感染している方が実は200万人くらいいらっしゃいます。
この方たちは無症候性感染者(一般的にキャリアと呼ばれる。)です。
感染即発症というわけではなく、潜伏期間が40~50年後と遅いことが特徴です。

大人になってから感染するとしたら、輸血・性行為らが想定されます。
というのも、このウィルスに感染しているかどうかは通常妊婦さんしか調べることがありません。
男性が会社の定期検診や、人間ドックでは調べることはまずないものです。
例えばあるご夫婦でがおられたとします。
結婚間もなく奥さんが妊娠された時は感染していなかったのに、二人目とか三人目とかの妊娠で奥さんに感染が発覚するパターンがあります。(もちろん、奥さんのご両親はキャリアではありません。)
ということは・・・なのですね。
そう、旦那さんから感染したとしか考えられないというわけです。

赤ちゃんの感染を防ぐために人工栄養を選択したとしても、100人当たり2~5人は感染を免れません。
この感染率は実は半年以内の母乳栄養を選択した場合の感染率と同じレベルなのです。(分母となるのは完母ばかりではないようですが。)
但し、半年以上母乳栄養を継続した場合の感染率は、100人当たり13~25人と跳ね上がります。
感染率を低下させるため搾乳してマイナス20度で凍結し解凍したものを湯煎にして飲ませる方法もあります。

先ほども書きましたように、人工栄養であっても6か月以内の母乳栄養であっても感染率は最大6%です。
感染すなわちキャリアとなった赤ちゃんが将来発症する確率は最大で5人なので、これを計算すると1000人当り3人が発症し、残り997人は無症候性感染のまま、人生を終えるということを意味します。

母子感染を免れたかどうかは、3歳の時点で血液検査をして陰性であれば感染防御ができたと見做されます。

ATLAは確かに発症を防ぎたい病気です。
ですが、見落としてはならないのはATLAばかりではないということです。
過去記事にも書きましたが赤ちゃんにはSIDSという恐ろしい病気があります。
この病気の日本国内での人工栄養児の発症率は母乳栄養児の5倍もあることを念頭に置いて、妊婦さんでATLAが発覚した場合は、最終的にどのような栄養方法を採るかということをご夫婦で話し合って決めていただきたいです。
(妊婦さんが感染しているかどうかは大変デリケートな問題なので、大抵の病産院では、告知は妊婦さんにだけ行われると思います。)

コメント

1 ■無題
この病気 うちの母が妹を妊娠した時に発覚しました。私はまだ5年生だったので詳しい事はわからなかったけど母乳で感染するからと言って 妹は完ミで育ちました。成人してから発症する病気と聞いていたので私も母乳感染してるかもしれなぃと言って検査しました。妹は今中学1年生になりました。まだ安心出来ないんですネ。
サエ 2009-12-19 08:58:18

2 ■無題
昔は、ATLAのママは、母乳禁だったりしましたよね。 
今は、病棟でも搾乳して冷凍しています。
母乳で育てたいってママは、多いですねぇ。
まいちゃん 2009-12-19 12:11:38

3 ■悩みました
妊娠初期の血液検査で陽性でした。長男の時は検査自体をしていなかったので、もしや長男にも………と不安でした。(検査は病院によってしたりしなかったりだそうで、それもどうかと……)母乳育児の素晴らしさをしっていただけにショックでショックで……。
結局は後の精密検査で陰性と診断され一安心です。
あげたくてもあげられない苦しみを身を持って体験しました。
寝不足や食事管理など大変なこと以上に、自分のおっぱいをくわえるわが子をみると『産んでよかった』と癒されますもんね~。
すごく気になっていた事なので参考になりました。
ありがとうございます。
プリティみなこ 2009-12-19 14:52:37

4 ■Re:無題
>サエさん
妹さんは3歳時点でウィルスの有無の検査をしておられませんか?現段階でウィルスが検出されていなければ感染していませんよ。(そのように見做されます。)
感染しておらしたとたら1000人に3人の割合で40~50歳代に発症する方がおられるということですよ。
SOLANIN 2009-12-20 00:15:24

5 ■Re:無題
>まいちゃんさん
今年出会ったATLAのお母さんは、40~50年先なら抗HTLV薬が開発されてることを期待します。と仰っていました。
分かる気がします。
SOLANIN 2009-12-20 00:18:36

6 ■Re:悩みました
>プリティみなこさん
そうでしたか!
各地の病産院で働いたSOLANINとしては、HTLVの検査なんてルーチンと思っていました。
(つまり、工作員として働いたトコロは全て検査することがルーチンだったので。)
長男さん、ご無事で何よりでした。
SOLANIN 2009-12-20 00:21:43

7 ■ニュースになっているようです
Googleの検索ランキングでこの白血病の事が上位にでていました。(関東で広まっているとか。朝日で取り上げられたみたいです)
このニュースを受けてむやみに完ミに切り替える方がいなければ良いのですが…
キノ 2010-04-19 13:14:53

8 ■Re:ニュースになっているようです
>キノさん
不安感を煽るのではなく、正しい知識を身につけて理解できるようにしてほしいですね。
今現在は無いですが、医学の進歩と共に、HTLVのワクチンが開発されるかもしれないし。
完ミは完ミでHTLVに対しノ―リスクって訳ではないですし。
SOLANIN 2010-04-20 00:33:22

9 ■お返事不要です
元宮城県知事の浅野さんがこの病気と闘っていらっしゃるようです。
年老いたお母様から「ごめんね」と言われるそうです。謝ることなんかないのに、と浅野さんはお母様を労っていらっしゃいました。
母も子も、せつなすぎます(涙)
良い治療方法があればいいなぁと思いました。
みなとやたま 2010-09-07 18:07:24

10 ■Re:お返事不要です
>みなとやたまさん
そうですね。
昔のことですから、調べようも無かったでしょうし。
浅野さんは60歳代でしたっけ?
そんなになられても、お母さんにとってはいとしい息子さんなのですね。
切なくて大きな母の愛ですね。
ワクチン開発してほしいね!
SOLANIN 2010-09-07 20:56:54

11 ■ええっ。母乳大丈夫なんですね?!
9月16日のN○Kの朝のワイドショーで、『母乳で感染する白血病ウィルス』というタイトルで取り上げられていました。
現在3か月半の娘に母乳をあげているため、びっくりして見ました。(慌てて番組後、血液検査の紙を祈る気持ちで確認しました。)
番組の狙いとしては、現在のところ、妊婦健診の際にキャリアかどうかを調べる義務はないため、お母さんが知らずに母乳をあげ、子どもに移してしまうことがある→元宮城県知事の浅野さんなどが国に働きかけ、ようやく管総理が動き出し、妊婦健診の際の検査の義務付けを検討している、ということなのですが、完ミで育てているキャリアのお母さんが出てきて、『周りから母乳で育てればと言われるとつらい。でも完母のお母さんに負けない気持ちで育てている。』といった発言なんかもあり、なによりタイトルからして母乳はダメ!!と言っているようなもので(笑)。
やっぱり何事もお母さんが勉強しないとダメですね。
ぺんぎん 2010-09-19 15:59:49

12 ■Re:ええっ。母乳大丈夫なんですね?!
>ぺんぎんさん
浅野元知事さんの赤ちゃんだった頃は、そういうことが(HTLV)分からなかったからね。
どのようにあげるかの選択肢はあります。
完ミにしたところで、完全防御は出来ないし、レトロウイルスの一種なので、難しいことは分かってるけど、何とかワクチンや特効薬の開発が望まれますね。
母乳をあげたから、絶対感染するのではないし、正しい知識を見につけてほしいですね。
感染したとして、発症までに40~50年。感染しても発症しないこともあるし、難しいね。
SOLANIN 2010-09-19 21:12:16

14 ■成人T細胞型白血病について
血液内科医です。
そして、叔母が成人T細胞型白血病で亡くなっています。
成人T細胞型白血病は、白血病の中で、もっとも死に至りやすいものの一つで、きわめて悪性度の高い白血病です。
抗がん剤治療だけで完治することはなく、すぐに骨髄移植が検討されますが、その準備すら間に合わずに亡くなられるケースが多々あります。
某歌舞伎役者さんが罹られた白血病の場合、「ああ運が良かったね、抗がん剤治療だけかな」と血液内科医なら皆そう思いますが(結局彼は骨髄移植しましたが)、浅野さんの場合は、これからの治療の困難さ・壮絶さを思うと、沈黙するしかありません。
1000人に3人、という言い方は、正しいです。しかし発祥した時の壮絶さは言葉になりません。
この数字は決して、この病気を軽視するきっかけになって欲しくはありません。
成人T細胞型白血病は、東南アジアに多い疾患です。つまり、欧米の知力はこの疾患には向けられません。
じゃあ日本ではというと、予算も多くありませんし、研究者もそれほど多くはいません。今後も治療やワクチンの開発は厳しいでしょう。
私個人としては、母子感染を予防するワクチンは、今後数十年はできないと見ています。
あまり、皆さんを期待させられるコメントではなくて申し訳ありません。
aromabloom 2011-02-07 05:55:35

15 ■Re:成人T細胞型白血病について
>aromabloomさん
なるほど。
人種というか民族的に発症に偏りがあることもあり、欧米の製薬会社等は、ワクチンや治療薬の開発そのものに、あまり興味を持っていないのですね。
しかも、我が国では、予算、研究者両面で不足していると…。
SOLANIN 2011-02-08 00:02:20

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