お産の大変さを赤ちゃんが克服すればおっぱいは軌道に乗ることはある!
最近の勤務先での実例です。
Hさんは、初産婦さんです。
赤ちゃんは逆子のままでしたが、万全の態勢で、経膣分娩をされました。
途中臍帯が脱出しそうになり、大変危険な状態にもかかわらず、産婦人科のドクターと担当助産師の適切な判断と対応で難局を乗り越えられました。
生まれた時のアプガーースコアは1分後6点でしたが、5分後には9点にまで回復しました。
ただ、出産が35週の早産だったので、赤ちゃんの体重は2724gもあったのですが、吸啜の意欲が今一つでしたし、3日間は保育器に入りました。
その後、5日目には高ビリルビン血症になり、ビリベッドで光線療法となり、入院期間中から山あり谷ありでした。
何しろ哺乳意欲に欠けるので、搾乳を補足したり、直母もソフトタイプの保護器を使用さざるを得ない状態でした。
入院中はそんなこんなでしたが、ソフト保護器を使用して20~40g/回は哺乳出来るように意欲も出てきて、7日目退院となりました。
ところが、10日目に母乳外来を受診したところ、退院後の赤ちゃんは気が抜けたのか?再びくったり状態で、7~8回/日しかおっぱいをあげていないとのことでした。
ヤバいなぁ~と思いつつ、体重測定をしたところ、7日目2575gだったのが、10日目2596gと、約7.0g/日の微増です。
もうちょっと上手だった筈なのに、吸啜時も舌が前に出ません。
上手に飲める赤ちゃんは口角を数㎜耳側に引っ張ると舌が見えますが、この時のHさんの赤ちゃんは口裂け女みたいにしなくては、口角から舌が見えないくらい引っ込んだ飲み方をしていました。
最後はくたびれ果てて、保護器の中の垂れてきたおっぱいさえ飲み下せない有様でした。
直母1回量はソフトの保護器使用で24gでした。
これではいけません。
私は、入院中と同じくシリンジとチューブを使って哺乳トレーニングを再開してもらうよう、お母さんに説明しました。
きっと、お母さんは逆戻りというか後退するような感じがしたようで、困った顔をしておられました。
私は、「早産の赤ちゃんが意欲的になってくれるのは、おなかにいた週数にもよりますが、経験的に35週生まれだったらその3週間後くらいになれば、すぐに眠るようなことはなくなりますよ。」
「生まれた時のしんどさが回復するのに2週間はかかりますよ。」
「飲み方が下手なままで放置するよりも、上手くなるようにトレーニングすれば、近い将来保護器も難なく外せそうですよ。」と申し上げました。
お母さんはハラをくくったのか、「分かりました。」と。肯かれました。
その11日後再診でした。
21日目の体重は3272gに激増し、前回からの体重増加度は61.4g/日でした。
直母1回量もソフトの保護器使用でしたが、88gも哺乳されました。
飲み方が別の赤ちゃんのようで、非常にパワフルに変貌していました。
口角から普通の引き方で赤ちゃんの舌が見えるように前へ出てくるように変わってきていました。
1か月健診の頃に保護器を外すトレーニングをするために再診するよう勧めました。
修正すれば、21日目というのは、再診時は38週相当です。
明るい希望の光が見えてきました。(笑)
コメント
1 ■(涙)
赤ちゃん、お母さん、頑張れ!!うまくいくことを願います。
すばいぶちゃん 2009-09-30 14:38:02
2 ■Re:(涙)
>すばいぶちゃんさん
有難うございます。
回り道しているようで実は近道・・・というのが、シリンジとチューブを使った哺乳トレーニングなんですね。
呼吸中枢を司るトコロと、吸啜・嚥下を司るトコロは接近してますから、アプガースコアの低い赤ちゃんはそれだけでおっぱいを飲むことが難しくなるのですね。
このお母さんは逆子ちゃんだったので、それだけで大変ですが、何とか乗り越えられそうです。
SOLANIN 2009-09-30 23:20:33
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