公民館や保健センター等で、「すくすく教室」とか「すこやか赤ちゃん」などの名称で、市区町村の保健師さんやフリーランスの助産師さんが、母乳育児について保健指導(いわゆる育児教室)をしておられますが、みなさん参加されたことはありますか?
実は約2か月前から他院出産のあるお母さんの育児相談を担当することになったのですが、困ったことがありました。
出逢ったのは生後29日目で、赤ちゃんが乳頭混乱で直母が出来なかったのです。
その頃の保護器を使用しての直母が3回/日のみで、ミルクの補足が500ml以上/日(ミルクの回数は8回/日)、直母量を測定しても、30分以上介助しても14gという有様で、冷静に考えて(キツいようですが)いきなり完母は到底困難な状況でした。
乳頭混乱ついては、再診した36日目の2日前頃に片方のみ克服され、それからかなりの期間を要したものの、反対側も克服されました。
そこまでは良かったのですが、このお母さん、「次は●日に受診してくださいね。」とお願いしていたにも関わらず、その後音信不通でした。
母乳分泌が少なめで遅れていましたから、何とか力になりたかったのですが、受診されなくては手の施しようがありません。
そして再会したのは、77日目でした。
その間は件の育児教室に行かれていたことが、母子健康手帳を見て判りました。
生後57日目のことです。
その頃は吐き戻しが3回/日はあったとかで、ミルクの補足は相変わらず500ml前後/日という状態で、直母を7~8回/日に増やしておられたそうです。
そうしたら、年配の助産師(氏名不詳)から「それはたくさん飲めるようになったということだから、いっそのこと、ミルク全部止めちゃいなさい。」と、指導されたそうです。
なんかおかしいと思いませんか?
生後36日目~57日目の体重増加度は44.3g/日と立派だったのですが、毎日ミルク500ml前後補足しての数値ですから、べらぼうな増え方とは言えません。
平均的な体格の月齢1~2の赤ちゃんですと、男児でおおよそ39g/日、女児で36g/日くらいです。
吐くのは確かに新生児の頃よりもたくさん飲めるようになったのでしょうが、この場合げっぷが不十分だったことが要因として大きいのです。
だって、哺乳瓶で飲んでいるのですから。
哺乳瓶の中が真空なら話は別ですが、そんなわけないですし。
恐らくこのお母さんは育児教室の担当が年配の助産師だったし、押し出しの強い方だったそうで、鵜呑みにされたのですね。
で、77日目に私と再会した時は、育児教室に参加されてから-6.0g/日と、減少していたのです。
この時このお母さんはミルク補足が経済的に負担であることと、アレルギーが心配だという訴えがありました。
本来ならばこの段階でミルクを補足したかったのですが、思いがけず直母1回量が増えてきていたのと、その育児教室の担当である年配の助産師に何か意図があるのかとも思い、取り敢えず次回受診時まではミルク補足なしで様子をみることにしました。
そして生後84日目には育児教室に再び参加され、体重チェックをされたところ、77日目からの体重増加度は14.4g/日だということでした。
復活の兆候?でも体重増加度は少なくて微妙。
前回と同じ担当の年配の助産師はミルクの補足が必要だということは一言も保健指導がなかったそうです。
その後私のところに受診されたのは、92日目でしたが84日目からの体重増加度は16.6g/日でした。
う~ん。やはりこの月齢では少な過ぎます。
もうちょっと増えてくるかと思ったのですが、流石にこれでは完母のままでOKとは私も言えません。
体重増加度はとうとうパーセンタイルグラフを割り込みました。
それより気になるのは頭囲の増加もギリギリの崖っぷちということです。
直母1回量も伸びません。
この場合はミルクの補足がどうしても必要です。
生後57日目の段階でのミルクのカットが不適切だったんですね。
私が「何かの意図があるのか?」と推理していた年配の助産師の保健指導は実はなんの中身(おっぱいの分泌や赤ちゃんの哺乳力)も確認せずだったことが判りました。
そんなんで完母を勧めるのはいけないのではないか?という事例でした。
後で判明しましたが、この助産師、SOLANINの住むまちの保健センターの嘱託で新生児訪問をしている人でした。
隣町まで、仕事をしておられたんですね。
自分が保健指導したことの尻拭いをしないなんてサイテーだと思いました。